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チェーホフの一幕喜劇『熊』を読んだ。

 チェーホフの一幕喜劇『熊』を読んだ。
 うら若いポポーワは、半年ほど前に夫を亡くし喪服姿のまま引きこもっている。その地主屋敷に、熊のように無作法な退役砲兵中尉スミルノーフが借金の取り立てのため乗り込んでくる。両者の言い分がかみ合わず、挙句の果ては決闘騒ぎにまで至る。たまげた老僕が庭師たちを連れてもどってみると、男は奥様と熱烈にキスをかわす。思いも寄らぬ結末に終わる悲喜劇である。
 この劇のなかで一番おもしろかった台詞はつぎのものである。
ポポーワ「わたしが過去現在を通じて知っている男の人のなかで、一番立派な人は、亡くなったうちの主人でした。……わたしは、若い思索的な女性でなければできないような愛し方で、あの人を熱烈に、こころをこめて愛しました。自分の若さも、幸せ、いのちも、自分の財産も、みんなあの人に捧げました。(中略)あの人を偶像とあがめていたのに、それが……それが――まあどうでしょう?その男のなかで一番立派な人が、破廉恥きわまるやり口で、わたしをだまし通してたんです!あの人の死んだあとで、恋文が机の引出しからいっぱい見つかったばかりか、生きているうちにだって――ああ、思い出してもぞっとする――あの人は何週間も家を空けたり、わたしの目の前でよその女を追いまわしたり、女をこしらえたり、わたしのお金をパッパと使ったり、わたしの感情をもてあそんだりしたんです。……それでもやっぱり、わたしはあの人を愛して、貞節をまもってきました。……それどころか、あの人が死んだ今でも、わたしは相変らず貞節で、心はもとのままですわ。わたしはこの四方が壁のなかに自分を永久に埋めてしまったので、死ぬまで決して、この喪服は脱ぎません……」

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愛川 今生

Author:愛川 今生
「言語文化の会」の幹事、ながく英語と関わってきました。写真はイギリス南西部の街にある大聖堂。これが私の原点となった街です。

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